NASA-TM-2004-213082

一昨日に紹介した,BPP終了にあたっての梗概を読んだ。(読まずに紹介しました。はい。)
もともと野心的な計画だから,すぐに成果が出るはずないのだけれども,実にパッとしない結果が並んでいる。具体的には,

  • 『重力シールド装置の追試では、その効果は確認されなかった。』
  • 『〜〜氏の理論を検証しようとしたが,効果があまりに小さく,測定不可能だった。』
  • 『電気的な反重力とされていたもの(リフター,非対称コンデンサなど)は,イオン風*1の効果に過ぎなかった。』

というようなものだ。一方,よく誤解されがちなカシミア(Casimir)効果*2については,理論的・実験的にしっかりと確認された現象なこともあって,研究は着実に進んでいる模様。でも,それが推進力として利用できるのかは不明とのこと。頑張ってほしいものだ。ちなみにカシミア効果とは,導電体の平板どうしを,おもいっきり近づけると,微少な引力が発生する現象で,真空の量子的ゆらぎが関係していると考えられている。

胡散臭い研究から,堅実なものまで,そこに一縷の望みがあれば試してみたBPPの姿勢は評価されるべきだろう。バカな政府機関が,詐欺的なお話にダマされて浪費している,とする見方もあるだろうけれども,本当に新しい考えはどこから出てくるかわからないし,たとえそれが「物理学的に間違っている」としても,有効かもしれないのだから*3

*1:1対の電極に高電圧を加えたとき,片方の電極の周りで帯電した気体が,もう片方の電極に静電気力により引き寄せられることで発生する風のこと。空気清浄機にも,この現象を利用したものがあるらしい。

*2:以前,BBCテレビのアレ系な特別番組で,UFOがカシミア効果によって飛んでるのだろう,と報道されてたのが印象深い。当時の僕は色めき立ったものだ。

*3:ライト兄弟が飛ぶ以前には,"空気より重い物体は浮かぶことができない"と「証明」した有名物理学者もいたのだ!