慣性質量

ここのところ、慣性質量について考えている。いったいこれは、何なのか。
一般的な説明では、「ものの動きにくさ」として教えられる。これはニュートンの第2法則である、 F = ma で、「物体に外力Fを与えた時に生ずる加速度a」ということから言っているわけだ。

でも少し考えてみて欲しい。

このばあいの「力」っていったい何なのか。感覚的な、筋肉の収縮と関係した意味でイメージすることは可能だ。だけど、それがこの"F"に対応しているとどうして言えるのだろう。

運動方程式で「力」が現れる以前から、力の概念は静力学において存在している。そこでは、その"力"が示すふるまいとして(逆に言えば、その"力"を特徴づけるものとして)「釣り合い」という概念があったわけだ。

だけど、運動方程式で扱う対象は、動的なものだ。それまでの、静的な世界にのみ限定されていた"力"を適用できる対象ではない。とどのつまり、運動状態における「力」は、それまでの"力"からは未知の概念なのではないか。*1

ぼくは運動方程式では、慣性質量だけでなく、力の概念も新しく創作されているのだと考える。ここでは、「力」も慣性質量も定義されてはいない。*2

じゃあ、運動方程式って何を言っているのか。
ぼくの友人Dによるとこうだ。

「運動は、加速度(速度の時間微分)を使って述べることにしましょう」、という提案にすぎないのではないか。

*1:これは、有理数で"数"を定義していたところが、√2 やπのような無理数という未知の「数」が出てきた状況によく似ている。無理数という数を創作してしまった後の観点で染まっているから、πだってアタリマエに数だと思ってしまいがちだけども…。

*2:マッハがやったように、ニュートン第3法則と合わせて、慣性質量を計算することは可能だけどね。